フィリピンでビジネスを行う上で、日本と比べて大きなメリットとなるのは【物価の安さ=人件費の安さ】です。人件費は日本の1/3~1/5と言われています。しかしながら、フィリピンに進出する日系企業が増えていかない理由の一つに【高額な電気代】が存在します。今回は、フィリピンにおける電気代事情をお届けいたします。
引用元:日本貿易振興機構(JETRO)
フィリピンはアジアで1番電気料金が高いと言われています。JETROの調べでは、フィリピンの首都マニラの電気基本料金は、アジアでも電気料金が高額と言われている日本(名古屋)と比べても、高くなっています。フィリピンはGDP一人あたり約3,000ドル程という事から考えると、非常に高額な電気料金を支払っています。マニラ市内の一般家庭では、電気代が年間約600ドルと言われている為、年収の約1/5が電気代で消えていくことになります。電気料金の高さが消費・需要の伸びを抑え、同時に需要の少なさが割高な電気料金を生み出すという仕組みが出来上がっているのです。フィリピンは常夏の国、しかしながら高額な電気料金が原因で、一般家庭でのエアコンや冷蔵庫の普及率は高いものとは言えません。
電気代が高額な分、国民はなるべく電気代を抑えようとします。昔の日本ではみんなが「もったいない精神」を持っており、節約できるものは出来る限り節約をしていたのではないでしょうか?フィリピンの生活は日本の一般家庭と比べた場合、いったいどんな生活を送っているのでしょうか。
待機電力も塵も積もれば山となります。外出時には冷蔵庫など常に電気が必要な機器以外は、基本的にコンセントを抜いて外出します。
洗濯機、TV、エアコン、電子レンジなどの電気機器はまだまだ普及率が低い状況です。洗濯機がない家庭では手洗いで洗濯を。TVがない家庭ではラジオを楽しむ。エアコンがない家庭では扇風機。電子レンジは使わない。という状況です。ラジオや扇風機も電気を使用しますが、なるべく消費電力の少ない機器を使用するのが一般的となっています。また、一度洗濯機やTV、エアコンを購入しても、故障したら購入しなくなるといった状況もあり普及率は上がらないのです。
フィリピンの電気代が高額になっている理由は一つではありません。様々な理由が重なり合っているのです。その中の一つに、電気使用者が負担する多くの上乗せ項目があるのです。上記に代表的なものを列記しましたが、最下部にある「System Loss Charge」は以前もご紹介した通り、盗電により無断で使用されている電気代です。日本であれば、「なんでそんなもの負担しなきゃいけないんだ」と声があがりそうですね。
フィリピンでは2012年頃まで電力供給は国家が管理していました。財政難・発電設備の老朽化・一般消費者の節電意識から長年にわたり慢性的に電力が不足し、改善に向け動けない状態が続いていました。そんな中、電力会社の民営化、小売り自由化が進み一度は電気代も低下していきました。ところが民営化された電力会社は競合他社が存在しない為、電気料金は再度高騰してしまったのです。現在では、発電事業者はサンミゲル、アボイティス、ロペス、メトログループ等の数社のみの状況です。
フィリピンにおける高額な電気代は、国民と国家を苦しめています。しかしながら、施設の老朽化や配電経路の複雑化などにより、すぐに動けだせない状況でもあるのです。更に他国と比べるとインフラ整備に対する政府補助金や、補助制度が少ないのもフィリピンの特徴。しかし現在では電気以外のインフラ事業でも、地場の財閥グループが積極的にインフラ産業に参入し銀行も融資にて支えています。また汚職摘発が積極的に進められ、フィリピンへの信用度が上昇。インフラ事業への投資が以前と比べ物にならないほど活発化しているようです。今後は電気を含むインフラ整備を国家として進め、更なる経済成長が期待されます。
今回、フィリピンにおける電力事情:電気代編をご案内いたしました。次回は「日本とフィリピンの電力制度・太陽光発電の違い」についてです。
エグチホールディングスではフィリピンにおいて、太陽光発電設備の販売・設計・施工・資材販売を行っております。海外におけるエネルギー事業については、なんでもご相談下さい。