「三種の神器(さんしゅのじんぎ)」という言葉があります。本来は日本に古くから伝わる宝物を指し示す言葉です。しかし第二次世界大戦(だいにじせかいたいせん)後の昭和時代(しょうわじだい)の日本において、電気に関する生活を大きく変える存在となった3種類の電化製品(でんかせいひん)のことを、「三種の神器」と呼んでいました。
今回はその「三種の神器」についてご紹介します!
電気の普及(ふきゅう)と、電気に関する技術の進歩で、電化製品はいまも進化を続けています。第二次世界大戦後の復興(ふっこう)のさなかにあってもそれは変わらず、また日本の高度成長期(こうどせいちょうき)の流れに乗ることで生活はよりいっそう便利になっていきました。
「三種の神器」は、1950年代に登場した「冷蔵庫(れいぞうこ)」「洗濯機(せんたくき)」「白黒テレビ」の三種類!
とくに冷蔵庫と洗濯機は、早朝から休むことなく家事をし続けた女性たちにひとときの「休息(きゅうそく)」を与えてくれました。そして白黒テレビで世の中のさまざまなことを知り、明るい話題でも盛り上がりました。戦後の日本が明るい方向へ進んでいることの象徴(しょうちょう)とも言えるものだったのです。
冷蔵庫といえば、冷気(れいき)で食べ物を冷やしたり、凍らせたりしてくれる便利な家電(かでん)。食べ物の長期保存などもできる便利な道具ですね。この冷蔵庫がない時代は、井戸水で野菜を冷やしたり、毎日買い物をして食材(しょくざい)が悪くなる前に調理をしたりと、工夫されていたんですよ。
また、電気を使わない「氷式冷蔵庫」というものを使っていました。氷屋さんから氷を買って上の段に入れ、氷の冷気で食べ物を冷やしていたのです。
洗濯機がない時代は、「洗濯板(せんたくいた)」を使って洗濯をしていました。表面がでこぼこした板に石けんをつけ、洗濯物をこすりつけて汚れを落とすのです。また、タライに水をはって、足で踏んで汚れを落とすなど、洗濯は「肉体労働(にくたいろうどう)」でした。
洗濯機が登場したおかげで、冷たい水に触らずに洗濯ができるようになりました。また、洗濯をしているあいだに他の家事をすることができるなど、時間を有意義(ゆういぎ)に使えるようになったんですよ。
※洗濯板は今も普通に売られており、小さなものなどは100均でも買うことができます。
白黒テレビは、いまのカラーテレビとは違い、色のない白黒の映像(えいぞう)が映っていました。始めは街角(まちかど)に設置(せっち)されたり、ちょっと裕福(ゆうふく)な家庭や、商店に置いてあったりしたんですよ。
白黒テレビのある場所に近所の人たちが集まり、大勢で同じ番組を見ることも。当時は力道山(りきどうざん)というプロレスラーが大人気で、プロレスの時間にはたくさんの人々がテレビの前に集まったといいます。
始めは高価(こうか)だったテレビも、やがて買いやすい価格(かかく)になりました。そして皇太子さまと美智子さま、つまり平成の天皇・皇后両陛下(てんのう・こうごうりょうへいか)のご成婚(ごせいこん・けっこんしきのこと)や、東京タワーの完成などをきっかけに、たくさん売れるようになったのです。
「三種の神器」が人々の生活を変え、電化製品・家電(かでん)が当たり前のように家にある時代になりました。すべて「電気」で動く、便利なものばかり。電気がなければ、いまもわたしたちの家にはなかったかもしれないものばかりです。
わたしたちは電化製品を当たり前のように使って、その便利さになれてしまっています。「テレビを見ない日」や「ハンカチを洗濯板で洗濯してみる日」などを作ってみると、電化製品や電気のありがたさがわかるかもしれませんね。
※画像は洗濯板と洗濯桶(せんたくおけ)です。