電気を始めとした「エネルギー」には、元となる「材料(ざいりょう)」があります。その材料からエネルギーを取り出して、わたしたちの生活や、地球上のさまざまな活動、さらには宇宙での活動に役立てているのです。
エネルギーの材料は、地球にあるものばかりではありません。太陽も材料のひとつ。そして最近、月の地下に大量の「氷」、つまり「水」があるかもしれないと話題になりました。その「氷」も、「宇宙開発(うちゅうかいはつ)」や宇宙での活動におけるエネルギーとして活用(かつよう)できるのではと注目されています。
そこで今回はエネルギーへの視点(してん)を宇宙に向けて、月の「水」についてご紹介します。
「月の内部には水がたくさんあるかもしれない」ということは、これまでも研究されてきました。月の表面の「水」は、月面調査(げつめんちょうさ)をした「アポロ計画(※)」時代に持ち帰ったガラス粒子(りゅうし)を調べ、水の痕跡(こんせき)が発見されています。その後も次々に水の痕跡は見つかってきました。
しかし2018年5月2日に、「東北大学 学際科学フロンティア研究所(とうほくだいがく がくさいかがくフロンティアけんじゅうじょ)」の鹿山雅裕助教(かやままさひろ じょきょう)を中心としたチームが、おどろくべき発表をしました。
それは月の地下に、たくさんの「氷」があるかもしれないというものです。つまり「水」が、月の地中で冷えて氷になって埋まっているというんですね。
※アポロ計画……1961年から1972年にかけておこなわれた、月面(げつめん)への有人着陸(ゆうじんちゃくりく)と調査に関する計画です。
鹿山助教は惑星科学(わくせいかがく)の研究者。その鹿山助教によると、約1万7000年前に地球に飛来した月の隕石(いんせき)を調査・分析(ちょうさ・ぶんせき)したところ、ある鉱物(こうぶつ)が検出(けんしゅつ)されたということなのです。その鉱物とは、「モガナイト」!
モガナイトとは一体どんな鉱物なのでしょうか。そしてモガナイトがあると、どうして水があることになるのでしょうか。
モガナイトは、水が蒸発(じょうはつ)することで作られる鉱物です。水がないと存在しない鉱物でもあるため、水が豊富(ほうふ)にある地球以外の星では作られないと思われていました。
もちろん、月も同じです。月は「アポロ計画」によっても知られているとおり、表面には水がありません。まさかモガナイトがあるなんて、思いもよらなかったことでしょう。
モガナイトが見つかった隕石は、2センチほどのとても小さなもの。その隕石が1立方メートルの大きさだった場合を考えて計算すると、モガナイトを作るためには18.8リットルの水が必要という計算になるんだそう!
1.5リットルのペットボトルがおよそ12~13本分。これだけの水が使われ、今回発見されたモガナイトが作られました。もちろん、月の地下に18.8リットルしか水がないなんてことは考えられないですね。
月の大きさや、隕石の大きさ、モガナイトの量など、さまざまな可能性(かのうせい)から、月の地下には大量の氷があるという可能性にたどりついたのです。
氷を溶かせば、水になります。水は、人間が生活していくためには欠かせないもの。飲み水としてはもちろん、「水素燃料(すいそねんりょう)」というものにもなります。水素燃料は発電にも使え、環境(かんきょう)にもやさしいクリーンなエネルギーです。
火星探査(かせいたんさ)などの宇宙開発が進むなか、月も再び注目されています。宇宙で使えるエネルギーには太陽光がありますが、そこに月の地下にある水がくわわることで、宇宙空間(うちゅうくうかん)で作り出せるエネルギーに対してよりいっそう期待(きたい)が高まっていきます。
もちろん、今すぐ実現できるわけではありません。何十年先、百年先という未来のことになることでしょう。しかしそんな未来を想像すると、わくわくしてきますね。
2018年の5月から夏にかけては、天体(てんたい)の注目度が高くなります。毎年恒例(こうれい9となっているいくつかの流星群や、1世紀ぶりの天体ショーも。
1世紀ぶりの天体ショーとは、木星と土星、そして火星が5月10日から地球に最接近するもの。そして、夏にかけて同じ方角の空に並ぶという、天文ファンではなくても見ておきたい天体ショーなのです。
よく晴れた夜に親子で空を見上げてみましょう。流星群はもちろん、木星や土星、火星を探してみてください。そして月も見上げながら、地下にあるたくさん水と、宇宙と未来のエネルギーを親子で考えてみてくださいね。