名古屋大学の天野浩教授(あまの・ひろし きょうじゅ)が2018年5月16日、新たな技術(ぎじゅつ)を発表しました。天野教授のことは「宇宙で発電した電気を地球に送る!夢のような研究の話」でもご紹介しましたね。
青色LEDに必要な「高品質結晶創製技術(こうひんしつけっしょうそうせいぎじゅつ)」を発明し、ノーベル賞を受賞した人物です。その天野教授が宇宙からの「遠隔給電システム(えんかくきゅうでんシステム)」に続き、新たな半導体(はんどうたい)を作りあげたのです。
今回はその新たな半導体についてかんたんにご紹介します! その半導体を使うとなにができるのか、見ていきましょう。
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宇宙で発電した電気を地球に送る!夢のような研究の話
電気を通すもののことを、「導体(どうたい)」といいます。いっぽう半導体とは、「電気を通すものであり、電気を通さないものでもある」もののことと。これは「条件(じょうけん)によって電気を通す」ようになるということなのです。
光が当たったり、温度が変わったりというような、半導体にある一定(いってい)の条件がくわわると電気を通します。しかしそれ以外のときは電気を通しません。身の回りのさまざまなものに、この「半導体」が使われています。
今回、天野教授が発表した半導体はこれまでの半導体よりすぐれたもの。実用化(じつようか)されれば、これまで以上の省エネも実現できるとされています。
天野教授が開発(かいはつ)に成功した半導体は、「窒化ガリウム(ちっかガリウム)」の結晶(けっしょう)を使ったもの。この窒化ガリウムは、青いLEDの材料でもあります。
この半導体は、これまで使われてきた半導体とくらべてエネルギーの消費量(しょうひりょう)が少なくすみ、大きな省エネを実現できるとされています。その省エネ量は、これまでの半導体のなんと10%以上! とてもすごいことですね。
今の半導体より生産コストが高くつくため、本格的な実用に向けては「低コスト化」という課題(かだい)があります。そのため2025年ごろには実用化できるよう、さらに研究を進めていくのだそうです。
半導体はさまざまなものにも使われています。私たちの身の回りにももちろん使われているんですよ。たとえばテレビやエアコン、スマホ、パソコン、電子レンジ……など、ふだんよく使う、家のなかにあるものにも半導体が使われています。
天野教授の半導体は、「次世代マイクロLEDディスプレイ」や、高電圧かつ大電流の制御機器に使用されることを目指しているそう。また、送電システムへの実用化も考えられています。
かつて天野教授の研究としてお伝えした、宇宙で発電した電気をレーザーで地球に送るという「遠隔給電システム」。今回の半導体が「遠隔給電システム」で使われる可能性もあることでしょう。
どちらの研究も、もとは青色LEDに関する研究と発明から始まっています。LED電球は消費電力の少ないものとして、わたしたちの家庭でも広く使われていますね。LEDから遠隔給電システム、そして窒化ガリウム結晶の半導体と、研究と研究がむすびつくことで、エネルギーの未来につながっていくのです。
2025年に天野教授の半導体がかつやくしているのか、今からとても楽しみですね。