阪神淡路大震災の経験は、これからの日本の災害対策において未だ重要な意味を持ちます。そしてSDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」にとっても、ある意味では礎となる大きな歴史の一幕でもあります。
今回は阪神淡路大震災を振り返ることの意味について、考えていきます。
2011年の東日本大震災と異なり、津波はなく、しかし直下型地震による激烈な被害が広がった大災害。阪神淡路大震災を振り返ること、語り継ぐことの意味にはどのようなものがあるでしょうか。
筆者には災害派遣で現地へ赴いた自衛官の知人が何人もいますが(現在は全員が定年退官しています)、今でも時折、そのうちのひとりが阪神淡路大震災の様子を(もちろん、話せる範囲で)話してくれます。しかも聞く度に、違う話や知らない話が出てきます。
これがどういう意味を持つのか。つまり災害派遣に行った自衛官でさえ「語り尽くせない」ほどの体験をしているということであり、震災の被害に遭われた地域では、「埋もれている体験」「本来なら語り継がれるべき体験」がまだたくさんあるということです。
大きな災害や戦争などには、体験を後世に伝える「語り部」がいます。しかし年月が経つにつれて、その語り部は減少していきます。なかには若い世代の人々が跡を継ぐケースもありますが、それでも体験を語る人数の減少に歯止めはかかりません。
報道された内容、語られた事実、それらがインターネット上で公開されていたり、書籍や資料として残っていれば良いですが、そうして残っているものは「実際の体験」のごく一部でしかありません。どういった状況で助かったのか、助けられなかったのか、揺れの実体験や避難生活、復興への道のりなど、「被害」の数だけ語られるべきものがあります。
未曾有の大災害から28年、震災の被害が大きかった地域では復興が進み、人々の日常が戻っています。SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」では、「包摂的で安全かつ強靭(リジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」としていますが、こうした都市や居住を実現するには、日本において「災害への対策」は必要不可欠なものとなります。しかし、実際に災害後、どのようにして復興を遂げていくかは、「災害の規模」や「種類」で全く異なってくるのです。
インフラや行政などの単位はもちろんですが、個人や「隣近所」といった小さな単位でも、「まちづくり」や復興への取り組みが必要になります。過去の災害を「振り返ること」「語り継ぐこと」は、復興やまちづくりへの大きな意味となるのではないでしょうか。
災害のあった地域から離れた土地に住んでいれば、語り部などからの実体験を聞く機会は少ないと言えるでしょう。しかし、今はインターネットの普及もあり、体験談や復興へのプロセスといった記録や情報を追いかけることは可能です。そうして追いかけることも、「知る」ことであり、未来のまちづくりに繋がっていくのです。
だからこそ、節目には立ち止まって振り返り、過去の災害を知り語り継ぐことが大切です。そして阪神淡路大震災に限らず、さまざまな災害を知り、未来への、持続可能な住み続けられるまちづくりの礎としていくことが必要ではないでしょうか。
エグチホールディングスはSDGsの実現に向けて取り組んでいます。