SDGsには17種類の目標がありますが、その目標の達成のためには「これまで培ってきたもの」「これまでの歴史や経験」が活かされ、重要視される側面があります。災害に強いまちづくりが求められる目標11「住み続けられるまちづくりを」においては、なおさらでしょう。
そこで大きな役割を持つのが「語り部」の存在です。今回は「語り部」にスポットを当てて見ていきます。
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「語り部」とは、伝承や民話、神話、歴史など古くから残るものを語り継いでいる存在のこと。近年では戦争や災害を伝える役割を担う「語り部」の印象が強いのではないでしょうか。こうした語り部の存在は大変重要で、これから先のまちづくりにおいて欠かせない存在でもあります。
現代の語り部が担う役割は大変重要であるとともに、語り継ぐ存在がいなくなってしまう問題にも直面しています。また、語り部が伝える歴史や体験から得られるものとは、どんなものなのでしょうか。
現代はインターネット環境やテクノロジーの発達によって、さまざまな記録を大量に長期保存できるようになりました。かつては書籍のような紙媒体であった記録も、いまでは「データ」として整理され、保存や閲覧ができる時代です。保存できる内容や量は過去の比ではなく、災害時や何らかの有事には、適切な記録を膨大に保存し、残していくことができます。
そうした今の時代に「語り部」が必要かどうかと言えば、必要としか言いようがありません。大量に保存された記録やデータは、確かに災害や有事の情報を正確に伝えます。しかし、実際に体験した「当事者の話」は、記録やデータだけでは推し量れない現実味があり、生々しさと共に「教訓」さえも伝えてくれます。
こうした語り部による口伝で続いていく話は、後世にも残ります。過去の津波がどこまで押し寄せたかを伝える石碑などがありますが、そうしたものと同様に「どれほどの被害があったのか」「どんな体験をし、何をすれば助かるのか」などを高い解像度で伝えています。
三陸には、「津波てんでんこ」という言い伝えがあります。話題になることが多いため、三陸以外に在住でも知っている方は多いのではないでしょうか。これは津波が来たら(来ると予想されたら)、とにかく早く逃げろという言い伝えです。これは「脇目も振らず逃げろ」「自分だけでも逃げろ」といった意味を持ち、そうしなければ助からないという教訓も含まれています。
古くからの言い伝えが今なお息づき、そして現代の語り部による新たな言い伝えが繋がっていくことは、「まちづくり」にとって礎となるものでもあるのです。
語り部は、実際の災害や有事から年月が経つにつれて減っていきます。第二次世界大戦の語り部が少なくなってきたように、近年の災害の語り部もまた、将来的に減ってしまう可能性があります。そのいっぽう、新たな語り部となるべく立ち上がる若い世代や、語り部の育成に力を入れるケースも見られます。
いっぽうで、「語り部ジュニア」という活動もあります。これは中高生などの若い世代が海外に英語で発信する語り部を育成する活動です。さまざまな自治体や団体が取り組み、地域の伝承や災害の経験などを外国人観光客などに伝えていくものが大半です。こうした海外へ向けた語り部育成の動きもあります。
新たな語り部を増やし、どうやって記憶を繋いでいくのか。国際化社会において、日本を訪れる外国人や、日本で暮らす外国人にもどう伝えていくのか。語り部に関わるこの課題は、SDGsの「住み続けられるまちづくりを」にとっても大きな課題と言えるでしょう。
今回は「語り部」をテーマに進めて参りました。語り部は地域にとって大変重要で大切な存在ですが、SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」によって「語り部」を考えるとき、よりいっそう存在感を増していきます。
地域の発展や、住み続けていけるまちづくりにとって、重要な出来事を伝える存在である「語り部」。語り部の話を聞く機会があれば積極的に耳を傾け、そしてその話を自身でも誰かに伝えてみてはいかがでしょうか。
エグチホールディングスはSDGsの実現に向けて取り組んでいます。