21世紀のいま、右を見ても左を見ても、「電気」を使う道具があふれています。外に出れば、信号機や電車など電気を使った交通が成り立ち、夜は星空がかすむほどに世界が明るく照らされています。
わたしたちの生活になくてはならない電気ですが、もちろん電気を使わない時代がありました。電気が初めて発見されたのはとてもむかしの話。今回はそんな「電気が発見されたとき」についてお話をしていきます。
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「【電気の今とむかし】電気の歴史とくらしの変化」でも少しご紹介しましたが、電気が発見されたのは古代ギリシャのことでした。今から2,600年もむかしのことです。「ギリシャ七賢人(しちけんじん)」であり、記録に残っている哲学者(てつがくしゃ)としては最も古いとされる「ターレス(もしくはタレス)」が発見しました。
※画像は虫を閉じ込めて化石になったコハクです。
宝石(ほうせき)として、多くの人に愛されている「コハク」という石があります。この石の正体は、太古の植物の樹脂が固まって化石になったもの。この化石を布でこすると、きれいになるどころかホコリやゴミ、糸くずなどがくっいてしまいます。そこでターレスは、「布でこすることによって、コハクがホコリなどを引きよせている」と気がついたのです。
コハクはむかし「エレクトロン(elektron)」と呼ばれており、そこから今の「electricity(電気)」という言葉が作られています。2,600年前から現代にまで続く、電気の歴史の第一歩です。
コハクがホコリなどを引き付けていることに気がついたターレスは、それを「磁気(じき)」によるものだと考えました。つまり、ふだんは何かを引きよせることのないコハクも、布でこすることによって「磁石」に変身するということなんですね。
わたしたちは「こすることで物を引きよせる」という現象(げんしょう)を聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。そう、「静電気(せいでんき)」です。わたしたちは現代の知識(ちしき)と経験(けいけん)で、すぐに「静電気による現象」だと気がつきます。しかし当時はまだ、静電気についての知識はもちろん、電気そのものについても知られていない時代でした。カミナリでさえも、神様の力によるものだと思われていたのです。これはギリシャだけではなく、他の国々でも同じでした。
ターレスが発見したコハクの現象は、16世紀になってジェロラモ・カルダーノというイタリアの物理学者(ぶつりがくしゃ)によって、「磁気」と「静電気(※)」はちがうものであると分けられました。これによってコハクは磁石になったのではないとわかったのです。
また「静電気」そのもののそんざいを発見したのは、同じく16世紀のウィリアム・ギルバートという物理学者です。コハク以外のものをこすってためした結果、同じ現象が起こるものと、起こらないものを見つけました。ターレスの最初の発見から2,000年もの長い年月が過ぎて、ようやくコハクに起こる現象の正体が判明していったのです。
2,600年かけて、現代のレベルにまで発達した電気の技術。もしターレスがコハクに発生した現象に気がつかなかったら、どうなっていたでしょうか。電気を研究する科学者は、たくさんいます。何世紀もずっと研究が重ねられてきました。ターレスが気がつかなくてもほかのだれかが気づき、そしてきっと電気技術が発達していたことでしょう。
ターレスの発見は、静電気を知っているわたしたちから見れば、とても小さなもののように感じます。しかし当時のターレスや人類にとっては、とても大きな発見だったにちがいありません。いまわたしたちが使っている電気は、そういった発見の積み重ねによって発達してきたのです。