沖縄のなかで2番目に大きい西表島。亜熱帯のジャングル、透明度を誇る海、川辺に広がるマングローブ林など、さまざまなスポットで多種多様な生態系を育んでおり、多くの天然記念物が原始の森で暮らしています。
島内を散策すれば、他ではお目にかかれない希少種に出会えるかもしれないのが西表島の魅力。そこで今回は、西表島で出会える天然記念物をご紹介いたします。
学術上の価値が高いものとして、文化庁から定められた動物・植物・鉱物・天然保護地区などの自然物を「天然記念物」といいます。文化庁のWebサイトによると、2023年7月1日現在、1038件が国の「天然記念物」と指定されており、特に重要な75件については「特別天然記念物」として指定されています。
今回は、西表島に生息している天然記念物のなかから「イリオモテヤマネコ」「カンムリワシ」「セマルハコガメ」をピックアップ。地域の人々に守られてきた希少かつ貴重な生物ばかりです。
最初にご紹介するのは、沖縄県の西表島のみに生息する「イリオモテヤマネコ」です。暗褐色の体毛・太いしっぽ・丸い耳先・胴長短足などが特徴。体重は4キロ前後、体長は50~60センチで、一般的なイエネコと同じぐらいの大きさです。
2008年の調査結果ではイリオモテヤマネコの推定生息数は約100頭と極めて少なく、現存種のなかで最も絶滅の恐れが高い「絶滅危惧IA類」に分類されています。マングローブ林や田んぼ、ジャングル、海岸線といった低地に生息していますが、個体数が少なく日暮れ時や明け方に活動するので、イリオモテヤマネコを実際に見ることは難しいでしょう。
出会えたら「運が良かった」程度の考えで留めておくのが一番。もし遭遇した際は、遠くからそっと見守ってあげてください。
続いてご紹介するのは、国指定特別天然記念物として指定されている「カンムリワシ」。日本では八重山諸島の西表島および石垣島に生息する固有亜種で、全身を覆う褐色の羽毛・鋭い眼光・目の付け根からくちばしにかけて黄色いのが特徴です。
環境省レッドリストにおいて「絶滅危惧IA」と掲載されていますが、西表島では道路脇の電柱や路上でよく見かけられており、比較的遭遇しやすい天然記念物といえるでしょう。島内を巡っていると、カンムリワシが西表島の空をゆったりと飛ぶ姿を目撃できるかもしれませんよ。
最後にご紹介するのは、西表島の豊かな森林地帯に生息する「ヤエヤマセマルハコガメ」です。体長約17センチ程度にしかならない小型のカメで、パイナップルやどんぐりのほか、昆虫類、陸貝なども食べます。
腹甲の前後に蝶番構造があるため、甲羅をたたむことができるのが特徴。そのおかげで天敵が少ないといわれていますが、森林伐採による生息地の消失、側溝への転落死、交通事故などにより種の存続が危ぶまれています。
イリオモテヤマネコやカンムリワシと同様に、ヤエヤマセマルハコガメも絶滅の恐れのある野生生物です。天然記念物に指定されている動物の捕獲・飼育は禁止されているので、触ったり捕まえたりせず、ぜひテクテク歩くかわいい姿を観察してください。
今回ご紹介した天然記念物に限らず、野生で暮らす動物は自分の力でエサを捕獲します。人間からエサをもらうことに慣れた野生動物は、自力でエサを取れなくなってしまうので、「かわいい」と思っても絶対にエサを与えないでください。また西表島の動物を島外に連れ帰ることも、もちろんいけません。
また、車社会が広がったことにより、交通事故で命を落とすケースも少なくありません。島内でレンタカーを使用する際は、島内各所で掲示されている運転注意マップや注意喚起の看板を参考にしながら運転しましょう。
島の約90%が深い森に覆われている西表島。秘境ともいわれる手つかずの自然が残っている希少な動植物の宝庫です。西表島の豊かな自然環境は、島民が守ってきたといっても過言ではありません。西表島で暮らす人々や動植物に思いを巡らせながら、島内を散策してみてはいかがでしょうか。