沖縄の離島「西表島」には、貴重な動植物が多く生息しています。西表島は太古のジャングルが残る、大自然の島。イリオモテヤマネコをはじめとした、多くの希少生物の生息が確認されています。
「カンムリワシ」もその一種。カンムリワシは国内では西表島と石垣島に生息、絶滅危惧IA類に分類される希少生物です。そこで今回は、カンムリワシにスポットを当ててご紹介いたします。
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カンムリワシ(学名Spilornis cheela perplexus)は、鳥綱タカ目タカ科カンムリワシ属の鳥で、西表島や石垣島のほか、中国やインド、インドネシア、ベトナム、スリランカ、タイなどに生息しています。日本では国指定特別天然記念物および、国内希少野生動植物に指定。また環境省レッドリストにおいて、現存種では絶滅の恐れがもっとも高い「絶滅危惧IA類」に分類される、大変希少な生物です。
カンムリワシは現地の方言で「マヤダン」や「バシントゥイ」などとも呼ばれているほか、八重山民謡の「鷲ぬ鳥節」に登場するなど、古くから八重山の人々に愛されています。
体長はおよそ55cm、翼を広げるとおよそ110cmになります。大きな印象がありますが、体重は800gほどと想像しているよりは軽く、獲物を捕獲する際の俊敏な動きが特徴です。
また、以下のような外見の特徴が挙げられます。
西表島と石垣島に生息するカンムリワシは、実にさまざまな場所を生活圏としています。西表島と石垣島ではよく飛翔する姿を確認できるほか、森林やマングローブ林といった大自然のなかだけではなく、人間の生活圏の近くである水田や電信柱などでも姿を見ることが可能です。
カンムリワシは、西表島と石垣島を代表する生物の一種。観光ツアーではカンムリワシなどの鳥を見るためのバードウォッチングツアーが組まれていたり、トレッキングツアーの折りにカンムリワシを目撃することがあったりと、島外の人々からも愛され、注目されています。
繁殖期は年に一度、3~4月ごろで、幼鳥は3年もの月日をかけて成鳥になります。現在、カンムリワシは、絶滅を危惧されていますが、年に一度の産卵と成長に時間がかかるという生態からも、保護活動を進めても個体数をなかなか増やしにくいという現実があります。
またカンムリワシは猛禽類のため肉食です。猛禽類は食物連鎖の頂点に立つ存在でもあり、西表島や石垣島の生態系においても、カンムリワシは非常に存在感があります。西表島や石垣島に生息する蛙やヘビなどの両生類や爬虫類、昆虫や甲殻類、ネズミなど、実にさまざまな生物を好んでいますが、とくにヘビを好むようです。
肉食ですが、決してどこかで捕まえたカエルなどの生き物や、購入した食肉などを、人間の手からエサとして与えてはいけません。カンムリワシが出現しそうな場所にエサを置くこともNGです。自然保護・生態系の保護、そしてカンムリワシの野生としての生態保護のためにも、守るべきマナーです。
西表島や石垣島を観光する際、レンタカーを使用するという方は多いのではないでしょうか。しかし自然が多い島では、動物と車が接触する交通事故が発生するケースがあります。
カンムリワシやイリオモテヤマネコなど、とくに希少な動物においては、交通事故は深刻な問題です。空を飛べるカンムリワシであっても、道路上に降りているときや滑空時などに車と接触し、負傷したり死亡したりするケースが相次いでいます。
西表野生生物保護センターによれば、西表島内の制限速度を守ることが大切だと伝えています。そのうえで、カンムリワシやイリオモテヤマネコ、そのほかの動物などを路上で見かけたり、道路周辺で見かけたりした際には、意識して減速することを求めています。
もし負傷したカンムリワシや、カンムリワシの遺体などを見つけたときには、以下の施設への連絡をするようにしましょう。
<西表島>
西表野生生物保護センター 0980-85-5581
https://iwcc.jp/
<石垣島>
環境省石垣自然保護官事務所 0980-82-4768
石垣市教育委員会文化財課 0980-83-7269
日本では西表島と石垣島に生息するのみのカンムリワシ。地元の人々だけではなく、鳥を愛する人々や観光客からも人気が高く、大切にその生態が見守られ、育まれています。
西表島や石垣島を訪れた際、颯爽と空を飛ぶ姿をはじめ、樹木や電信柱の上で佇んでいる姿を見かけることがあります。絶滅が危惧された希少な存在ですので、カンムリワシを見かけた場合はその生活を脅かすことのないように観察したいですね。