前回、西表島の入島数(入域数)制限についての記事で、「オーバーツーリズム」について触れました。2030年のゴールに向けて17種類の目標を掲げるSDGsには、オーバーツーリズムにつながる目標も少なくありません。またオーバーツーリズムの問題は、「旅行をする」人々の誰もが意識するべきものでもあります。
今回はこの「オーバーツーリズム」にスポットを当てていきたいと思います。
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オーバーツーリズムとは、観光客によって観光地の自然などの環境や、住民の生活に影響を及ぼすことを意味します。どんな観光地であっても、大なり小なり観光客による影響はあり、またそうした影響は回避することが難しいものです。
なかには観光地の環境を激変させてしまうケースも見られます。そうした観光地が抱えるオーバーツーリズムの一例を見ていきましょう。
日本国内においても、オーバーツーリズムの問題は多く発生しています。たとえば富士山では、環境への汚染が深刻となっています。世界遺産に登録されるよりも前から指摘され、観光客や登山客によるゴミやし尿による環境問題の解決は大きな課題となっています。現在もさまざまな形でこうした汚染への対策は進められていますが、完全解決にはまだ遠いと言えるでしょう。
また京都では多すぎる観光客によるゴミ問題や景観の破壊など、さまざまなオーバーツーリズムによる問題が発生しています。交通の混雑もそのひとつであり、地域住民による公共交通機関の利用に支障が出るケースも。世界的な観光地が抱える問題は大きく、京都市では観光協会によってオーバーツーリズム対策事業なども進められています。
沖縄においても、観光客の増加によって自然環境や住民の生活への影響のほか、交通渋滞や宿泊施設が足りないという問題も発生。また宮古島や八重山などの人気エリアにおけるオーバーツーリズムの影響は多岐にわたります。
この「リゾLABO」でも過去にご紹介したフィリピンのボラカイ島。ボラカイ島はかつては観光地ではありませんでしたが、近年認知度が上昇し、多くの観光客が訪れるようになりました。いっぽうで多くの観光客に対応できるような下水処理能力がなく、ホテルやレストランなどの施設からビーチや海に汚水が滲出し、汚染が広がる問題が発生。一時期、そうした状況や環境を少しでも改善するためとして、2018年にはボラカイ島そのものへの観光客の入島を禁止しました。
ボラカイ島の閉鎖が解除されたあとも、観光客の入島数規制や、ホテルの予約、ビーチでの過ごし方などさまざまな形で規制があり、ボラカイ島の環境を守るための施策が続けられています。
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オーバーツーリズムの問題は観光客の増加によるもので、西表島やボラカイ島のような規制をするのも大きな対策のひとつです。しかし「観光」そのものを排除することはできません。京都のオーバーツーリズム対策事業や、西表島の入島(入域)制限、ボラカイ島の閉鎖など、観光地側による対策が目立ちますが、オーバーツーリズム問題の解決には観光客側のモラルとマナーも求められます。
SDGsの「持続可能」な取り組みのなかには、持続可能な観光を目標とするケースは少なくありません。地域の自然を守る、陸や海の豊かさを守る、観光地のまちづくりや経済成長を支えることによる貧困対策、観光地において発生する「つくる責任」と「つかう責任」など、挙げればキリがありません。
オーバーツーリズムへの対策と、観光地の環境や生活を守るためには、観光地だけではなく利用する観光客側も一度立ち止まり、観光時のモラルとマナーについて考えることが大切です。
エグチホールディングスはSDGsの実現に向けて取り組んでいます。