【SDGs】「ヤングケアラー」を知ること、支援を考えること


「ヤングケアラー」の存在が、日本社会において認知され始めています。2021年4月12日に厚生労働省と文部科学省が発表した、中高生対象の全国調査の結果では、「世話をしている家族がいる」と回答した中高生の割合が思いがけず多いことが明らかになりました。

 
中学生では、およそ17人にひとりの計算となる5.7%。高校生ではおよそ24人にひとりの計算となる4.1%が、家族の世話をしています。世話をしている対象は祖父母や両親、きょうだい、親族など幅広く、思春期のこどもたちが直面する大きな問題が浮き彫りになっています。

 

「ヤングケアラー」とは?子どもたちが抱える苦悩


「ヤングケアラー」とは、介護や病気の家族のケアなどを担う18歳未満の子どものことを示す言葉です。今回の厚生労働省と文部科学省の調査では中高生が対象ですが、実際には小学生のヤングケアラーもいるほか、中高生のなかには小学生の頃から家族の世話をしてきたという子どもたちも少なくありません。

 
本来であれば、周囲の大人がするべき世話を、何らかの事情で子どもが担ってしまうヤングケアラー。周囲への助けを求めることもできず、また無理解に苦しむ子どもたちも多いのです。

 

子どもたちはなぜ「ヤングケアラー」となってしまうのか

なぜ子どもたちがヤングケアラーとなるのか、それは各家庭の事情があり、それぞれに異なる理由が存在します。「やむを得ず」家族の世話をしなければならないケースや、理不尽な理由で家族の世話を押しつけられているケースなどさまざまです。

  • 両親がいないため、祖父母の介護を担っている
  • 両親が仕事で忙しく、家族の介護や世話を頼まれている・押しつけられている
  • 親が病気になってしまい、面倒を見る親族が自分しかいない
  • 病気や障がいのある家族のサポートを担っている
  • 行政のサポートを知らず、助けを求められない
  • 家族の問題行動への対応をしなければならない

 

本人や家族が「当たり前」と思う危険性と、周囲の無理解

ヤングケアラーとなる子どもたちは、大半のケースで選択の余地がありません。「自分がやるしかない」と諦めてしまったり、家族の状況から「自分がやるのが当たり前」と思ってしまったり。また家族や親族からも「この子がやって当たり前」と思われてしまうことで、子どもたちが家族の世話から抜け出せなくなる危険性も孕んでいます。

 
またヤングケアラーの子どもたちは、家族以外から理解されにくい苦悩を抱えているケースが多く見られます。学業や友達づきあいなどに影響が出た際、「実は介護をしている」「家族の世話がある」と相談しても、「そんなことはあり得ない」「もっとマシな言い訳をしろ」と言われてしまいがちです。

 
いわゆる「普通」の家庭環境から考えれば、「子どもが家族の介護や世話をするのはあり得ない」「普通は大人がするものだ」と感じてしまい、ヤングケアラーの子どもたちの訴えをなかなか信じられないという実態があります。

 
また子ども故に行政のサービスや支援を知らず、完全にひとりで抱え込んでしまうほか、前述のように周囲から理解を得られずに誰にも相談できなくなってしまうケースが多く見られます。

 

「ヤングケアラー」として家族の世話を続けることによる影響

ヤングケアラーとして家族の世話を続けることは、並大抵のことではありません。学校のない時間に少しだけ家の手伝いをする、といったレベルではなく、状況によっては家族の世話だけではなく家事なども全て担ってしまうのです。それに伴い、子どもの学業やコミュニケーション、進路などにも大きな影響が生じます。

  • 学業の遅れ
  • 早退や遅刻の増加
  • 不登校
  • 睡眠時間の大幅な減少
  • 部活動に参加できない
  • 友達と遊びに行けない
  • 塾に通えない
  • 進学を諦めなければならない
  • コミュニケーション能力の成長阻害

 

SDGsの目標においても、ヤングケアラーへの支援は必須

SDGsでは「質の高い教育をみんなに」「すべての人に健康と福祉を」「人や国の不平等をなくそう」といった、ヤングケアラーにも深い関わりのある目標があります。そしてSDGs自体にも「全ての人を取り残さない」といった大きな前提とも言える信念があります。

 
周囲にヤングケアラーと思われる子どもがいる場合、「そんなことはあり得ない」と思うのではなく、まずは話を聞くことが求められます。その上で行政の介護サービスや児童相談所、「24時間子供SOSダイヤル」や「子どもの人権110番」を紹介したり、ヤングケアラーをサポートするNPO法人を紹介するなど、できる限りのフォローが大切です。

 
「家庭の問題だから」と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、なかには虐待となるような事例もあります。ヤングケアラーである子どもたちの大半は、自分の家族に相談できる状況ではありません。家族以外の周囲の大人たちや行政などが子どもの訴えに耳を傾けることが、ヤングケアラーの子どもたちを助けるための大きな役割、最初の一歩とも言えるのではないでしょうか。

 

「ヤングケアラー」への支援と対策はこれからが正念場


日本においてヤングケアラーに関する状況はまだ遅れていると言えるでしょう。全国規模の調査がおこなわれたのも、今回が初めてのこと。ヤングケアラーという言葉を初めて知ったという方も多いのではないでしょうか。

 
イギリスではヤングケアラーへの取り組みを1990年代の初頭からおこなっています。「ヤングケアラー」は元々イギリスで生まれた言葉。現在もイギリスでは多くのヤングケアラーがいて、社会問題となっています。

 
日本においても今後、ヤングケアラーの増加が懸念されます。どこまで行政や民間、周囲の大人たちで彼らの存在を把握し、フォローすることができるのか。今回の調査で明らかになった数字とともに、これから本格的に大きな社会問題かつ課題として、取り組んでいかなければなりません。

 
エグチホールディングスはSDGsの実現に向けて取り組んでいます。