国連人口基金が発表した2020年版「世界人口白書」において、出生の前後に消えた女児について言及がされ、各報道機関によっても発信されました。「世界人口白書」によれば、この20年において累計で1億4260万人もの女児が、そしてこの5年間ではおよそ640万人もの女児が消えてしまっているとのこと。これはこの20年に限ったことではなく、女児の消失はもっと昔から脈々と続いている問題でもあります。
出生の前後に女児が消えてゆくこの問題では、一体何が起きているのでしょうか。今回は「SDGs」の5番目の目標「ジェンダー平等を実現しよう」にも深く関わるこの問題にスポットを当てて見ていきたいと思います。
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女児が出生前後に消える、そこから見えてくるのはまず男児選好によるものではないでしょうか。実際、前出の累計において多くを占めるのは中国とインドとされ、両国ともに男児選好が強い国でもあります。男児選好における中国とインドの背景を中心にご紹介します。
中国における男児選好の背景として、人口抑制のための「一人っ子政策」が挙げられます。子どもの数は夫婦につきひとりと決め、ふたりめからは罰金を支払わなければならない政策です。この一人っ子政策において男児選好が強く見られます。子どもがひとりしか持てないのであれば、跡継ぎとなる男児がいいという希望が高まるのです。
その結果、妊娠後に性別が女児とわかれば中絶したり、出産後に殺害してしまったり、捨ててしまったりといった問題が発生。男児選好によって出生前後に消えてしまう女児が増えていきました。現在では一人っ子政策が廃止され、二人っ子政策となっていますが、男児選好が残っているのが現状です。
また、「無国籍」の人々も少なくありません。一人っ子政策時代に二人目として誕生した子どもが、出生そのものを隠されてしまうケースです。これは女児に限らず男児にも起こり、1,000万人を超える無国籍の人々がいると言われています。
インドにおける男児選好の背景には、「跡継ぎ」などとして男児が強く望まれていることにあります。そして女児には「お金がかかる」――つまり、結婚時に持参金が必要になるという事情も男児選好の背景にあると言われています。
男児を産むまで妊娠出産を繰り返したり、妊娠中に女児だとわかれば強制的に中絶したり。また、育児を放棄することで、女児を幼いうちに死なせるといった行為も見られます。インドと中国では文化や生活背景は異なりますが、女児を望まないといった共通の姿勢が強くあるのです。
また、インドにおける女性への性差別はこの男児選好からも伺えますが、大きく問題になっているのが女性への性暴力です。男尊女卑の意識が未だ強いインドにおけるジェンダー問題は、非常に根深いものとなっています。
中国やインドに限ったことではなく、男児選好は世界各地に見られます。現代では医療の発達によって、妊娠中に性別がわかります。そのため「中絶」という選択を取るケースも多く見られるようになりました。
国によって、時代とともに男児選好が薄れていくケースもあれば、変わりなく蔓延しているケースもあります。男児選好による女児の消失の有無を問わずに言うのであれば、男児を好む傾向は発展国・途上国を問わず存在すると言えるでしょう。
ジェンダー平等の実現に向けて、この男児選好は非常に大きな問題、そして課題として横たわっています。今回は男児選好による女児の消失にスポットを当てましたが、ジェンダー平等の実現に向けては実に多くの解決すべき問題があります。
2030年に向けてSDGsのさまざまな取り組みがおこなわれるなか、あと10年でどこまで実現できるでしょうか。ジェンダー平等の実現に向けて、少しずつ身近な取り組みや問題へ意識を向けていくことが大切です。
エグチホールディングスはSDGsの実現に向けて取り組んでいます。